ガレージキット
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ガレージキットとは、少数生産少数販売される組み立て模型のキットを指す。
目次 [非表示]
1 字義的な意味
2 発展
3 ガレージキットの種類
4 ガレージキットの生産技法
4.1 バキュームフォームによる生産
4.2 キャスティングによる生産
4.3 焼成による生産
4.4 エッチングによる生産
4.5 NC工作機などによる生産
5 ガレージキットの位置づけと流通
6 ガレージキットと版権
7 主要なガレージキットメーカーとブランド(取り扱い系統)
8 関連項目
[編集] 字義的な意味
名称の由来は60年代末にアメリカで「ガレージロック」を元に命名されたというのが定説である。また、欧米におけるバックヤードビルダー(自宅の裏庭などで専門家顔負けの技術でいろいろなものを作るひとびと)の作業場所が主にガレージであることからガレージロックと同じく、同好の士が作り配布する小規模な組み立て式模型を示す。現在では製作技法の進展と造形素材の入手しやすさなどから生産数が増えてきており、「少数」の定義は多少曖昧になっている。
「ガレキ」と略されることもある(そして、「出来が悪い」という評価とともに「瓦礫」という身もふたもない当て字がなされることもある)が、これは島本和彦の『ガレキの翔』(徳間書店、1995年3月発行)という作品で広まった言葉と概念であり、モデラーやファンにはこう呼ばれることを好まない人もいる。
[編集] 発展
日本はプラスチックモデルが第二次世界大戦後、造形技術がある程度成熟してから流入したために中小模型メーカーの商品であってもインジェクションキットが一般的だが、欧米では採算の取れそうもないマイナーなアイテムをバキュームフォームキットとして製作、販売するメーカーが存在していた。インジェクションキットは金型に巨額の設備投資を要するため、家庭用の掃除機でも製作可能なバキュームフォームキットは少数生産には向いた製法であった。1960年代から70年代までのガレージキットはバキュームフォームや、ペーパークラフトをプラスチック板に転写したものが一般的であった。
模型市場が拡大してくると、大手模型メーカーにより生産、販売される商品に対する不満を感じたユーザーなどによって、個人製作のガレージキットが製作された。ここでいう不満とは、精密さ・再現度・表現力などの質的な面とラインナップの不足などの量的な面である。またそれには知名度や人気の低い作品への愛着やマニアから高い評価を受けたデザイナーのデザインの立体化など、ファンとしての心理が働くことも多い。当初は、バキュームフォームキットであり、大まかな形だけを成形したものが多く、精密さや再現度は組み立てるモデラーの技術に依存していた。また細かな部品はバキュームフォームでは成形できないためメタルキャストといった技術が使われており、完成させるにはかなりの技術を要した。ホビージャパン1979年8月号において歯科用レジンを用いて複製された1/35ロビー・ザ・ロボットが発表されたのが日本における個人の製作したガレージキットの走りと言われている。1980年代初頭にはゼネラルプロダクツ(現ガイナックス)が設立され、バキュームフォームとホワイトメタルのガレージキットを数多く販売している。シリコーンゴムとレジンによってより精密で丈夫な複製が可能であることが広まると、絶版キットの複製や破損、紛失パーツの複製が行なわれるようになった。と同時に改造したパーツの合成樹脂による複製が可能となり、模型誌に発表されるプロモデラーの作品の複製を欲する動きが出始めた。そのため日本におけるガレージキットは著名な原型師の作品の複製であるという認識も根強くある。
レジンは接着が難しいなどの難点はあったが表面のディティールや細かなモールドも再現可能であったため完全な自作の原型を樹脂で複製したガレージキットが登場するにいたった。これらは主にSF映画などのキャラクター製作に用いられ、完成度の高さから急速に広まっていった。日本でも80年代中頃から模型誌によって複製技術が紹介され始め、土筆レジン(ニッシリ)のプラキャストなどの複製素材が販売されるようになった。特にブームによりパーツの改造が一般化したガンプラでは複製技術は渇望されるものとなった。バンダイはB-CLUBというブランドを立ち上げ改造パーツや映像媒体を持たないガンダムシリーズの立体作品をリリースし始める。同名の模型誌も創刊されガレージキットの知名度、認知度は高まっていった。
現在では市場が拡大し、少量多品種のキットを専門に製造するメーカーも登場した。また、大手メーカーが大量生産・大量販売をするほどのマーケットがないと判断した場合に、ガレージキットと同様の手法で商品を生産する場合もある。従って、なにをもってガレージキットと呼ぶのかという定義はかなりあやふやなものとなりつつある。個人やきわめて小規模なメーカーが少量生産し販売するものを狭義のガレージキットとし、それを越える規模のメーカーが販売するものは生産手法を問わず含めない、とする考え方もある(それらについては、生産手法に基づいて「レジンキャストキット」「エッチングキット」などと呼ばれる場合がある)。また一般向けの販売を目的としていない非商業的なものも、ガレージキットの範疇に含まれる。
分野としては、自動車・航空機・鉄道車両・船舶・兵器・宇宙船などの乗り物・機械類のほか、アニメーション作品や映画、実在の俳優などを含む各種キャラクターのフィギュア(人形)などがある。
また、ガレージキットの場合、そのキット商品のひとつで完結することを目指さない場合も珍しくはない。たとえば大量生産・大量販売されているキットの不満な点を改善するための部品セット、といった商品もある。そういった位置づけのガレージキットでは、マスプロ生産されるキットをベースとしたり、機能部品をマスプロ商品から流用したりすることが広く行われている。
[編集] ガレージキットの種類
バキュームフォームキット
プラモデルの項、製法による分類参照。
メタルキット
ホワイトメタルという低融点の合金で作られるキット。金属を素材としているので接着と塗装が難しい。熱により型が消耗するため大量生産には向かない。
レジンキャストキット
合成樹脂をシリコーン型に流し込んで生産するキット。現在ガレージキットと言えばほとんどがこの種類を指す。
ソフトビニールキット
金型を用いて生産するキット。素材がソフトビニール(塩化ビニール)。かつては玩具として非常に多くの製品が流通していた。大量生産に向くが、専用設備と専門技術が必要。精密な模型も可能だが直射日光の温度で変形する、素材の油分の為に塗料の食いつきが悪いなど経時変化に弱い。
[編集] ガレージキットの生産技法
ガレージキットは、少量生産向けの技術を使って生産されることが多い。金属板のエッチング加工部品・シリコンゴムと熱硬化性樹脂によるプラスチック部品・NC加工を行う工作機械(NC工作機)や手作業生産による部品などが採用される。組み立てにはある程度の(あるいは、時としてかなりの)模型製作スキルを必要とする。 複製・生産された「キット」に対し、その元となった図面や立体物を「原型」、図面や原型を製作した人を「原型製作者」「原型師」「マスターモデラー」などと呼ぶ。これらの原型をもとにキットが製作される。
[編集] バキュームフォームによる生産
バキュームフォーマーと呼ばれる底面に空気抜きの穴を備え吸引機能を持つ機械で、熱したプラスチック板を加工する。原型は底面がもっとも面積が大きくなるように適切に分割される必要がある。表面に細かなディティールを施したい場合は雌型を用いることもあるが、雄型が一般的である。製品は最中のように中空の貼りあわせになるので軽くなり比較的大型のキットが製造できる。吸引は家庭用の掃除機でも可能であり、家庭用の小型バキュームフォーマーが市販されている。熱したプラスチック板を押し付けるので原型は木で作られることが多い。生産に手間がかかり細かなディティールの再現は難しいが、原型の破損は少なくある程度の個数の生産が可能。
[編集] キャスティングによる生産
キャスティングは、原型から注型用の雌型を作成して樹脂や金属を流し込んで造形物を複製する技法である。一般的なレジンキャストによる生産では、金属板・プラスチック板・粘土(石粉粘土、樹脂粘土、ポリエステルパテなどの熱硬化性樹脂)など様々な素材を用いて手作業で製作した原型を、シリコーンゴムによって型取りし、そこに液状の熱硬化性樹脂を注型して硬化させることで、原型の複製を得る。メタルキャストでは低融点の金属を溶かして注型する。シリコーンゴムは常温で硬化し、珪素を含むもの(ガラス)以外にはほとんど接着しないため原型素材はプラスチックや金属、紙粘土でもかまわない。ただし原型の表面がざらざらしていたり、細かな穴が開いたりしている場合はゴムが吸盤状になり密着性が強化され型から剥がれなくなることがある。
一般的なプラモデルなどに使われる熱可塑性樹脂によるプラスチック成型では必須の、たいへん高価な「金型」が不要であり、初期投資額をおさえることができる。生産効率は低く一つの型で10個から20個の複製が限界であるが、キャスティングキャスティングはポピュラーな手法となっている。原型が破損しなければある程度の生産は可能だが、破損するごとに型をすべて作り直す必要があるため、生産費は高めである。また柔らかいシリコーンゴムは歪みやすく、精度を保つためにはテクニックを必要とする。
[編集] 焼成による生産
ソフトビニール人形などはロウ型と呼ばれるロウ製の雄型を製作するところから始まる。レジンキャストでは原型の破損は少ないが、ソフトビニール製作ではロウ型に分厚い金属メッキを施し丈夫な雌型を作り上げるため、ロウ型は溶かして取り出すことが前提である。メッキ層がそのまま金属型となるためロウ型の精度が製品の出来となる。原料を流し込んで充分に型にまわして加熱し、薄皮ができたあたりで引き剥がすように製品を取り出すため多少の逆テーパーでも問題なく成型できる。とはいえあまりに小さな穴から大きな製品は抜けないために適切に分割する必要がある。ロウ型は失われるがメッキ型は残るためもっとも大量生産に向いている。ソフトビニールは柔らかいことを前提に分割しない型で作られているためあまり精度の必要な製品には向かない。
[編集] エッチングによる生産
エッチングは、金属板を腐食性の液体で腐食し、板厚を薄くしたり、完全に溶かして穴をあけたりする金属板加工である。金属板は、真鍮・洋銀(洋白)・燐青銅などが用いられる。
腐食させたくない部分に塗料を塗るなどの方法もあるが、ある程度の量産をする場合には、写真技術を応用することが普通である。金属板上に精緻な文様をつけたり、薄い金属板の場合には細かな抜き加工をすることも可能である。
これにより生産される製品は薄い金属板状の部品であることが多いため、厚みのあるもの、面積(体積)の大きいものには向かない。生産費も高く、設備、技術にも専門性を求められるために精密さを要求されるスケールモデルのディティールアップパーツなどが生産され、エッチングのみで一つの完成品となるキットはほとんど存在しない。図面が残っていれば製版は何度も繰り返すことができる。
[編集] NC工作機などによる生産
レーザーカッター・フライス盤・ワイヤーカッターなどのNC工作機によってパーツを製造することもある。これらは、生産費は安いものではないが、安定して高精度の部品を生産できる。機能部品の製造などに用いられる。原型製作に用いられることはあるものの、ガレージキットがもともと設備投資を抑えて作られてきた経緯から考えても一般的ではない。原型データが残っていればいくらでも生産が可能だが、生産費が高すぎるため各パーツを毎回工作機械で削りだして製作するキットは、美術工芸品としての精密縮尺の装飾銃やライブスチームなどの限られた分野のメーカーによる製品がほとんどである。
[編集] ガレージキットの位置づけと流通
手作業の個人レベルでも原型を直接複製したキットが生産可能なため、モチーフに対する原型師の解釈や作家性がダイナミックに反映されやすく、この点がガレージキットの大きな魅力である。反面、少量生産に適した生産手法をとらざるを得ないことから量産性は低く、マスプロ生産品と比べると高価であることが普通である。また、流通経路も限られている。
ある程度の数が生産・販売されるキットについては大型模型店などの流通ルートが徐々に整備されてきている。海外製品のレーシングカーやスーパーカーなど希少車のガレージキットは、日本国内でも比較的容易に入手できるようになってきた。
個人製作のキットについてはガレージキット展示即売会等で入手できる。主な即売会としてはワンダーフェスティバル(主催: 海洋堂)・C3・スワップミートなどがある。
最近ではインターネットを利用した通信販売で、ガレージキットメーカーが直接販売に乗り出していることもある。また、ガレージキットメーカーが、特定の小売店などに販売委託をし、そういった店を軸として通信販売や小規模卸などが行われている場合もある。
[編集] ガレージキットと版権
模型はもともと模したものであり、ガレージキットの原点は、商業上の理由で生産されないマイナーな作品の立体化や、あまりに似ていない玩具的なアレンジの商品に対する不満などである。そのため元イメージに近づけることは大前提であった。しかしガレージキットの出来が良ければ良いほど版権(商品化の権利および販売専有の権利)所有者の権利を脅かすことは自明であり、ガレージキット黎明期からこの問題は付きまとった。1980年代のガンプラブーム以降、ガレージキットと版権(著作権や著作隣接権)は、アニメーション作品や映画などに基づくキャラクターフィギュアのケースで顕著となった。
アニメのファンジンや同人誌では絵が似ていない、ストーリーが違っている、などを理由に版権元は同人活動を半ば黙認、半ば無視していた。しかし方法論として似せることが大前提であるガレージキットでは版権元の許諾なしに販売活動を行なうことは難しかった。そのためボークスや海洋堂など初期のガレージキットメーカーは版権の許諾されやすい特撮作品の立体化を行なっていた。東映や円谷プロは小規模な企業にも版権を許諾したため、仮面ライダーの怪人や円谷の怪獣などが許諾のもと販売されていた。
しかし元々個人の趣味の範囲からスタートしたため、黎明期には既存のキャラクターをキット化したものであっても、版権元(著作権、商品化権等の所有者)の許諾を得ないで流通しているものもあった。1985年から始まったワンダーフェスティバルでは、そうした無版権のガレージキットときちんと契約をして販売されているガレージキットとの差異がますます浮き彫りとなった。許諾を得たディーラー(イベント参加者・ガレージキット販売者)は売り上げからロイヤリティーを支払い、また製品を許諾してもらうための審査も厳しい。しかしアマチュアとは言え無版権で販売しているディーラーが同じ会場内に存在していることも事実であった。
そういった状況の中、ワンダーフェスティバル(当時の主催者はゼネラルプロダクツ)は、当日版権制度というシステムを導入する。これはイベント主催者が個々の版権元と事前に交渉することで、そのイベント当日、イベント会場内だけに限定してキットの展示・販売に関する許諾を取りつけるというものであり、危ういバランスを保ちながらどうにか現在も継続中である。
だがガレージキットの認知度が高まり、市場が拡大されていくうちに1990年代以降からワンダーフェスティバルを中心としたガレージキット展示即売会の規模は拡大の一途をたどっていった。また造形素材の進歩、パソコン通信の発達といったガレージキットをめぐる環境の変化から版権元も版権ビジネスを意識し始めるようになる。1997年頃から始まった塗装済みフィギュアのブームと生産拠点の海外移転によるガレージキットの低価格化もあり版権の許諾はアマチュアに厳しくなりつつある。また、急速なインターネットの普及にともなってネットオークションで販売される会場限定キットや海外で複製され販売される無版権ガレージキットの増加により無版権(海賊版)キットに対する風当たりは強くなり、版権意識の向上を促すキャンペーンが模型誌上で展開されるようになった。供給側であるディーラーだけではなく、消費側であるユーザーにも海賊版は買わないように呼びかけられている。
なお、建築物・自動車・船舶・鉄道車輌・航空機などについては、「玩具としての意匠権」などの登録がない限り、模型化は原則として自由である。しかし大手模型メーカーが独占販売権を手中におさめるために「模型化許諾」という概念を持ちこんだことや、ビデオゲーム用ソフトのメーカーがこれに追従したことで、多少の混乱がみられる。
[編集] 主要なガレージキットメーカーとブランド(取り扱い系統)
AIRES - 軍用機とAFV関連のレジン製ディティールアップパーツ。企業名を冠したレギュラーブランドと、梱包の簡素化や商品内容を見直した低価格ブランドのquickboostの二系統有り。
B-CLUB - バンダイのレジンキット専門ブランドでガンダム関連のレジンキットとバリエーション展開を目的とした改造パーツ、美少女キャラクターのフィギュア
CMK - ミリタリーモデルのディティールアップパーツ全般。
バーリンデンプロダクツ - ミリタリーモデルのディティールアップパーツ全般。
モデルカステン - 大日本絵画が発行する月刊模型誌のモデルグラフィックスのガレージキットブランド。1/35AFV用の組み立て式インジェクションキャタピラとMa.Kを扱う。
SOLモデル - 韓国の模型店のSOLモデルが自社名を冠したガレージキットブランド。 1/35AFVと1/48軍用機用のディティールアップパーツ及び各種フィギュア。1/48軍用機用では、日本の市場のみを意識したアイテム(AAM-3や(開発当初の完成予想図を参考にした)AAM-5)や事実上フルキットに近いアカデミー製の1/48 Su-27のバリエーションモデルへの改造パーツも含まれる。
壽屋(コトブキヤ) - 各種美少女キャラのフィギュアとゲームやアニメのロボットのフルキット、ロボット関連ではスーパーロボット大戦シリーズやアーマード・コアシリーズのようにインジエクションキットでの展開が行われる様になった物も存在する。
エデュアルド - ミリタリーモデルのディティールアップパーツ全般 独自の商品としては、塗装済みエッチングパーツや必要とされる形状にカット済みのマスキングシートが存在する。自衛隊が保有する軍用機のエッチングパーツは、商品内容を変更し、他の企業にOEM供給されているアイテムも存在する。
ファインモールド - 自社製品のインジェクションキットをディティールアップするためのアイテム及び機種限定メーカー汎用の金属製パーツの製造。
PLATZ - レジン製Nゲージ用アクセサリ類及び旅客機と航空自衛隊が保有する軍用機のエッチングパーツ(一部は他の企業からのOEM)とデカールを販売。
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