主人公・大蔵遊星は、日本の財界を代表する華麗なる一族・大蔵家の末端に、望まれぬ子として生を受けた。
長じて人並みの夢と希望を手に入れた遊星は、性別を偽り 桜小路ルナに仕えることで、大蔵家という自らを閉じこめる籠を脱して夢の一端に触れることができた。
しかし些細なミスで掴んだ夢の端は崩れ落ち、居場所をなくした遊星は、兄に拾われて再び籠の中の鳥となった。
遊星の妹・大蔵りそなは、大蔵家の嫡子と正妻の間に生まれ、愛の上に愛を重ねて大切に育てられた。
何一つ不自由なく育てられたりそなだが、幾重にも重ねられた両親の愛は、やがて固まり歪な繭となって、さなぎになる前の彼女を包み込んだ。
りそなが気付いた頃には、その繭は自力では破れなくなってしまった。
居心地の良い繭の中で抵抗する気力を奪われ、りそなは外へ出ることを捨てた。
――ある日、彼らの兄は試みとして、籠の中へ繭を放りこんだ。
りそなは外の世界に憧れて、兄に尋ねた。 「私は繭の外へ出られますか」
遊星は繭をつつき、その殻をクチバシで壊せることに気が付いた。 「出られるよ」
安全だった籠と繭を捨て、遊星とりそなは微笑み合いながら同じ言葉を口にした。 「二人なら旅立てる」――
フィリア女学院日本校へ通えなくなった遊星のため、りそなは パリ本校への留学を提案する。
遊星は再び庶民の娘・小倉朝日となり、りそなに仕えるメイドとして、服飾専修機関へ通うこととなった。
パリには新しい少女たちとの出会いがあった。
純粋な心に卓越した才能を持ち合わせる メリル。 その主人であり、明るく親切にふたりを迎える ブリュエット。
同級生の リリアーヌ や、個性的な留学生の ディートリンデ。 そしてそれぞれの従者たち。
新しい国で様々な出会いを経験し、遊星兄妹の主従としての生活が始まった。
遊星=朝日は自らの夢を追い、りそなは自立するための勇気を求める。
しかしすべてが前途洋洋に進むはずもなく、新天地の厳しさ、ふたりを逃がした兄、さらには大蔵家の追跡が襲いかかる。
果たしてお互いの願いを支え合いながら、遊星兄妹は学院生活を送ることができるのか?
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