東京ゲームショウ2013の試遊では、辞世の句は聞けないので要注意!
ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアから、2014年夏発売予定のプレイステーション Vita用ソフト『俺の屍を越えてゆけ2』(以下、『俺屍2』)。“続編”という位置付けと、ポータルサイトで更新されていた制作日誌“続編への道”などでしか情報が明かされていなかった本作だが、先日公式サイトがオープンし、“特報!アニメトレーラー”も公開。発売予定時期の発表に東京ゲームショウ2013へのプレイアブル出展決定と、怒涛の情報更新が行われている。
その盛り上がりの一環として、Webメディアを対象に行われた今回の“試遊取材”。東京ゲームショウ2013で出展予定バージョンの本作をひと足先に遊ばせてもらい、画面写真を撮影、特別に先行公開。さらに、ゲームデザイナーの桝田省治氏に、試遊したばかりの本作について気になるアレコレを聞いてきたので、その模様をお届け。ちなみに、試遊取材が行われた朝陽館本家は、東京ドームのすぐ近くという都心でありながら、落ち着いた佇まいの閑静な純和風旅館。古くはマンガ家の手塚治虫氏が、締切に追われて“カンヅメ”になって仕事をしていたことがあり、その部屋は当時のままの状態で宿泊用に使われているとのこと。
──今回、プレイステーション Vitaということで、ネットワーク関連はどのようになっているのでしょうか?
桝田省治(以下、桝田) コンセプトとしては、あらゆるデータを共有しましょう、というのがあります。まず、本作はプレイヤーによって、ゲーム開始時点からいろいろ環境が違ってくるんですよ。現段階では詳しく言えないのですが、例えば、最初から好きな職業を3つ選べたりとかね。あとは、街に対する投資が前作よりすごく細かくなってて、薬屋だけが大繁盛している街とか、武器屋なら負けないとか、何かに特化した街をプレイヤーが作ることができるようになっています。それ以外にも、QRコードを利用した“共有”もあります。もちろん、他人とデータを共有するという遊びかたが性に合わない人でも十分に遊べるようにちゃんと作っているので、安心してください。
──最初に職業が3つ選択できるというのは前作にはない仕様ですね。
桝田 最初から選べるのが3つというだけで、ほかの指南書も前作同様、いろいろなところで拾えますよ。ランダム要素という意味では、自分の一族が現在どの職業に就いているかとか、過去どの職業を選んでいるか、という状態を見て、街の人たちが対応し始めるんです。うちの親方は弓使いをずっと使ってるから、いいランクの弓を仕入れよう! って感じで。そうすると、さっき言っていた“特化した街”ができあがるんです。まあ弓使いを作った時点では弓が並んでいなくても、その代から何代か後には、ちゃんと並ぶようになるから、そこまで厳しいバランスではないかなと思います。
──職業の使用頻度とは関係ありますか?
桝田 ある程度は。ただし、指南書を持っているだけでも対応するようになってますよ。
──討伐隊の4人目が、自分の一族ではない夜鳥子(ヌエコ)というキャラクターで固定されていましたね。
桝田 詳しくはファミ通文庫(※)で、というやつです(笑)。夜鳥子(ヌエコ)が使役している式神について詳しく知りたい方は、ファミ通文庫をぜひ! 3巻のお話が、『俺屍2』の半世紀ぐらい後の話になるのかな? ちなみに文庫では露出度高めでしたが、諸事情により厚着になっています(笑)。
※エンターブレインより刊行されている『鬼切り夜鳥子(ヌエコ)』シリーズのこと。全5巻。
──夜鳥子さんは最初から一族にいるんですか?
桝田 入るのは途中から。天界にいるんだよね、夜鳥子さん。ストーリーに深く関わってくるキャラクターのひとりです。
──初代当主の顔をカメラで取り込んで作りましたが、けっこう似てて驚きました。おもしろいシステムですね。
桝田 似てるときと似てないときがあるけど、正面を向いて撮れば、大体似ますよ。元々3D化が目的ではなくて、顔も遺伝させてほしいという要望が多かったのが発端です。顔を遺伝させるとなると、3D化する必要があり、そうすると、神様のほうからも遺伝しないとおかしいだろうということで、神様も3D化しないといけなくなって、仕事量が一気に増えて(笑)。どうするかと悩んだけど、要望が多いということに後押しされました。そして、顔が遺伝できるならPS Vitaにはカメラもあるし、撮影して似たような顔を作ることもできるんじゃないか、という発想ですね。
──じゃあ、“交神の儀”で一族と神様の3Dモデルの特徴を併せ持つ子どもが産まれてくるわけですね。
桝田 基本的には、人間の特徴より神様の特徴のほうが控えめに遺伝するようなバランスになっています。例えば、祖父母の代で赤猫お夏と交神して、親の代で雷王獅子丸なんかの猫系の神様と交神すると、3代目辺りで猫耳が生えてくるかもしれない。がんばれば一族全員、猫耳っていうのもできるはず。そういったこだわりを、ぜひほかのプレイヤーと共有していってほしいですね。
──神様一覧には、奉納点が足りなくて交神できない神様も入っていました。
桝田 東京ゲームショウVer.は15分しかプレイできない予定なので、できるだけおいしい所を見てほしいなと。“熱狂の赤い火”も、製品版ではあんなに灯ってませんし(笑)。
──前作でのイツ花のポジションに、コーちんがいましたね。
桝田 彼女は、製品版ではかなりお利口なアドバイスをしてくれるんですよ。「今の一族の状態だったら、この迷宮に、このアイテムを取りに行くべきだ」とか。前作の弱点として、ストーリーでグイグイ引っ張っていくタイプのRPGが好きな人だと、つぎにどこへ行ったらいいかわからないとか、たくさんのアイテムの中からどれを持っていけばいいかわからない、という意見をもらったことが挙げられます。だったらゲームに慣れるまでは、「こうやったらいいよ」というアドバイスを随時数種類出してやろうと。誰とどの神様が交神したらいいよ、とか、どの武器が安売りしてて誰にちょうどいいですよ、とかね。
──すごく親切ですね(笑)!
桝田 やっぱり交神の儀は見てほしいので、東京ゲームショウVer.では、3つあるアドバイスのうち、ひとつは交神の儀が入るようにはしてあります。あとは、イツ花と違って迷宮で走ってるときも「そろそろ回復しないと危険」と忠告してくれたり。
──大体、一度は走って失敗しますからね(笑)。
桝田 あと、迷宮の同じマップ内に、出撃隊のレベルでは太刀打ちできそうにない敵が現れた場合は、「強敵が出現しています!」と警告してくれたり。最初の2~3年目は、割と強引に進行していくイメージかもしれませんね。プレイヤーが慣れてくると、アドバイスが必要な状況になる前にプレイヤー自身が対応するはずなので、そこまで気にならないと思います。もちろん、前作のように最初から細かく自分で行うことも出来ますし。
──ところで、コーちんの色が、名前募集などで公開されていたイラストと違うようですが……?
桝田 ああ、あれは冬毛と夏毛です。
──なるほど(笑)!
桝田 ゲーム中の季節に合わせて、冬春は冬毛、夏秋は夏毛に変わるイメージです。キャラクターデザイン担当の佐嶋真実さんに、イタチとかテンとかオコジョ系統の女の子を発注したんですよ。そうしたら上がってきたものに2色あって、「どっちにするの?」と聞いたら、「冬毛と夏毛があるでしょ!」と言われて、「ああ、そうなんだ」って(笑)。なので、アルファ・システムさんにも「あるってよ、2色」と伝えました。
──ほかにも、季節などで変わるものはありますか?
桝田 迷宮の見た目はけっこう変わりますよ。
──見た目と言えば、猫屋敷の猫だらけっぷりにはビックリしました(笑)。
桝田 あそこだけかな、変なコンセプトの迷宮は。ほかは、いわゆる“迷宮”というデザインコンセプトです。
──猫はかわいかったんですが、四角い部屋が連なっていて、かなり迷ってしまいました。
桝田 あそこはね、製品版では何とかします(笑)。ほかにも敵がまったくいないエリアがある迷宮なんかもあるので、その辺りも調整していきます。
──全体的なバランスについては、いかがですか?
桝田 そこまで難しいという感じにはしてないですよ。ただ、コーちんのアドバイスをしっかり入れる代わりに、それを聞かないプレイヤーは苦労するよと(笑)。まあ、今回は前作よりは死ににくいようにはしてあります。
──東京ゲームショウでの試遊で、ムチャして時間を進めて、辞世の句を聞こうとするプレイヤーがいると思うんですが……。
桝田 東京ゲームショウVer.は絶対死なないようになってます(笑)。なので、素直にダンジョンでの戦闘や交神の儀なんかを楽しんでください。辞世の句と言えば、『俺屍2』では量をかなり増やしたんですよ。 もう台詞は書き終えていて、あとは音声を収録するだけだね。前作では一族の人数は256人までだったけど、今回は約1000人まで増やすよう調整しているから、延々やっていれば全部の辞世の句を聞くことも理論上は可能だと思いますよ。そうそう、256人で切らないで、という要望もすごく多かったんですよ。メモリの関係でどうしても増やせなかったけど、今回は約1000人になるので、そうそう終わったりはしないと思います。
──攻撃術などで変更点はありますか?
桝田 前作では、3段階のものと4段階のものの2種類ありましたが、今回では全部4段階までにしました。皆さんの恐怖の的だった“真名姫”の、さらに強いやつが入っているワケです(笑)。あと、術の“併せ”をやってくる敵も出てきますね。
──“続編への道”では、タイトル候補がいくつもあったという情報がありました。正式タイトルが『俺の屍を越えてゆけ2』に落ち着いた理由を教えてください。
桝田 最近、移植されるゲームが多いじゃないですか。そういうゲームって、新しくサブタイトルをつけて新作っぽく見せようとする風潮があるなと思っていて、下手にサブタイトルをつけると移植作品に見えてしまうと思ったんです。なので、“2”を強調したほうがいいんじゃないかという話になり、『俺の屍を越えてゆけ2』になりました。それに、発売したらどうせ“俺屍2”って呼ばれるに決まってますし(笑)。
──最後に、『俺屍2』を待っているファンへメッセージをお願いします。
桝田 今回、目標をふたつ立てました。ひとつは、いわゆる続編として、前作からのいろいろな要望などを取り入れ、正当な進化を目指すこと。もうひとつは、ほかのプレイヤーとの違いを共有して遊ぶシステムなど、いままでにないおもしろさの提案です。自由度の高いシステムなので、ファンの皆さんは僕たちが想像している以上に多様な遊びかたをしてくれると思っていて、、それがすごく楽しみです。おそらくプレイヤーたちがしてくるであろうことの、半分も今の僕たちは予想できていないと思うので(笑)。そういう部分も含めて、僕自身がワクワクしています。
ところで、僕が監修している『ログ・ホライズン』という小説(※)のアニメが、10月からNHK Eテレで始まるので、そちらもよろしく。
※エンターブレインより刊行されている小説。現在、5巻まで発売中。