『仁王2』とは? 『仁王』シリーズは、刀や槍などの武器を手に、手強い兵士や妖怪たちと戦い、トライ&エラーをくり返しながらステージを攻略していくアクションゲームです。フロム・ソフトウェアの『ソウル』シリーズが作った潮流から生まれた作品のひとつですが、もっとも大きく違うのはアクションのプレイフィールでしょう。 いわゆるスタミナである気力の概念はありますが、気力が切れない限りは攻撃や回避が俊敏に行えるので、つねにスピード感のあるアクションが楽しめます。と言っても、それはもちろん気力管理をしっかりしていればのお話。ただボタンを連打しているだけでは、すぐに窮地に陥ってしまうはずです。
また、正攻法で突破する以外にも、術やアイテム、ステージギミックを有効活用するなど、攻略法がいくつも存在。オンラインプレイにも対応しており、最大3人での共闘が楽しめます。つまり、仲間とともにステージを攻略してもいいわけです(なお、今回はリアルタイムでのオンライン対人要素はありません)。
ほかのプレイヤーデータのAIが仲間になってくれる“義刃塚”も新たに登場します
戦国中期を舞台に描かれる『仁王2』 『仁王』といえば、史実をベースにした戦国時代に、妖怪などのファンタジー的な要素が加わった世界観が特徴。前作『仁王』の舞台は戦国末期で、三浦按針をモチーフにした主人公のウィリアムと、彼を取り巻く徳川家康らの姿が描かれました。
一方、『仁王2』は戦国中期、いわゆる織豊時代がテーマとなっており、織田家を中心にストーリーが展開します。
半妖の存在である主人公・秀(ひで)は、あるとき霊石(アムリタ)売りの商人・藤吉郎(演:竹中直人)と出会います。秀はあるとき妖怪の力が暴走してしまうのですが、藤吉郎はアムリタの扱いに長けており、主人公の力を抑え込むことに成功。腕の立つ侍がそばに欲しい藤吉郎、妖怪の力を正しく使いたい秀。お互いの利害が一致します。
藤吉郎は、竹中直人氏の演技がもうハマリ役。「ウッキー!」と、まさに猿かの如くおどけてみせるシーンなど、竹中氏らしい藤吉郎像となっています。
妖怪たちとの戦いを経て、彼らは織田信長に仕官。秀と藤吉郎のふたりは、お互いの名前を取って“秀吉”と名乗ることになります。これがのちの“豊臣秀吉”になるということですね。
史実としては、あの戦乱の世の中で、百姓の出身と言われる藤吉郎が、なぜ天下統一を果たすほどの大名となったのか、という一種の謎がありますよね(もちろんしっかりとした歴史考察はありますが)。そこを妖怪の力を持つ主人公が補っていたのでは? そしてその裏には、アムリタの力が関与しているのでは? というような、『仁王2』ならではの戦国史が味わえるのが本作の醍醐味と言えるでしょう。
そんな藤吉郎と刃を交える主人公……。歴史のロマンが味わえるドラマが見どころ!
実際、物語では主人公の活躍によりどんどん“秀吉”は出世していきます。桶狭間の戦いで、海道一の弓取り・今川義元をひとりで討ち取ったり、斎藤家侵攻のために現地にいる妖怪の力を借り、墨俣城を建設などなど……。史実での豊臣秀吉の活躍が『仁王』風に味付けされた物語は、歴史好きにもたまりません。さらにほかの武将たちも妖怪の力を使い……と、一大スペクタクルが巻き起こるわけです。
織田信長
斎藤道三
竹中半兵衛
主人公をプレイヤー好みにカスタマイズ そんな主人公・秀は、性別から見た目まで、プレイヤーの自由となっています。前作でのウィリアムさんの物語は、プレイヤーとしては寡黙なカッコイイ侍の活躍を眺める、というような感情でしたが、本作では自分好みのキャラクターで遊べます。そのおかげで、主人公への感情移入も捗る!
秀には出生などの設定はありますが、性格はフラットに描かれており、というか喋りません。名前を聞かれれば、小刀に書かれた“秀”の文字を見せるだけです(そのあたりの設定も物語で描かれます)。ですので、物語への介入度はやや薄めといった感じ。その代わり、相棒である藤吉郎が、主人公の気持ちや意思を代弁してくれるので、まさにふたりでひとつの“秀吉”といったところ。しかしこの秀吉も一筋縄ではいかず……というのが、物語としても重要なところでした。
ちなみに本作は甲冑などの装備を付けると見た目にも反映されますが、主人公の頭装備の表示をオフにもできます。装備の都合上、顔の見えないお面なども付ける場合がありますので、なるべくオフにするのがオススメです。自分で制作したキャラクターが隠れてしまわないようにするのはもちろんですが、カットシーンなどでの主人公の表情にも注目すべきだからです。
アクションはより多様化。でも遊びやすく 体力と気力を管理しながら、つねに手に汗握るような骨太なバトルが楽しめる『仁王』シリーズ。『仁王2』では前作同様に、多彩な武器の使い分けから、上段・中段・下段の構え変更。攻撃の終わりに気力を回復する“残心”や、“武技”といった武器固有のアクションまで、そのほとんどが引き継がれています。
細かい点ですが、前作では壁やオブジェクトに攻撃が当たると、武器が跳ね返されるという要素がありました(武器や技などにもよるのですが、大半は跳ね返りました)。これにより、狭い場所での戦いや、武器を振る場所に気を付けなくてはなりませんでした。本作ではそれがなくなり、場所を選ばずに武器を振るえるように。
また、敵妖怪が作り出す、気力回復が遅くなるゾーンの“常世”という要素があります。常世は残心を成功させることで“常世祓い”としてかき消すことができますが、前作では最高のタイミングで残心をしないと常世祓いができませんでした。しかし本作では、どのタイミングでも常世祓いが可能となっています。
些細な部分ではありますが、上記ふたつのおかげで、バトル自体が非常に遊びやすくなった印象です。ただ、だからといってカンタンになったわけではありません。体感的に、本作は前作以上に敵の攻撃力が高く、もし対処法を間違えれば、最悪1~2撃で落命するくらいの難しさ。「不便なところは改善した。だが、易々とクリアーさせるわけにはいかない」という、開発者からのメッセージが伝わってくるような調整です。
そのほかに、初見では対処できないような理不尽な攻撃、見えにくい落とし穴などのトラップといった“死にゲー”とはいえストレスの溜まりやすい要素は比較的少なめになった印象です。もちろん、あるにはあるのですが、奇襲を待っている敵を逆に先制攻撃、トラップを弓矢で事前に破壊など対処法が存在するので、ステージを攻略していくたびに、「ここ何かありそうだな?」と、自分がどんどん疑い深くなるわけです(笑)。
前作の“九十九武器”に代わって登場する“妖怪化”もさることながら、守護霊の属性に応じてアクションが変わるカウンター攻撃“特技”、妖怪の技そのものを放つ“妖怪技”など、前作よりもアクションが増え、やれることはたくさんあります。
考えることや操作も多くなり、アクションとしてはより複雑化しました。慣れないうちはデメリットではありますが、段々と攻略法を身に着けていくうちに「このタイミングで妖怪技を使おう」、「この敵にはこの特技で挑もう」など、1個1個のアクションを、敵やステージギミックの対処法として使えるようになっていくのです。この“試しながらステージを進んで行く”という戦略性も、『仁王2』のおもしろいポイントでしょう。
試しがいのある妖怪技 敵妖怪がドロップする“魂代”を社に持ち帰って装着すると、その妖怪の技を使えるようになります。
妖怪技は最大3種類まで装備でき、妖力を消費してくり出せます。これが個性的な技ばかりで、敵によって有効な妖怪技を試していくのがなんとも楽しいのです。
妖怪技によっては、武器に属性を付与するものや、ステータス効果が大幅に上昇するものなどさまざま。『仁王2』では、妖怪技が攻略の大きな鍵となっているのです(と言っても、頼らなくてもクリアーできます。あくまでも手段のひとつなのです)。
色彩豊かな武将との戦い 巨大な妖怪たちとの激戦もさることながら、個人的に推したいのが武将たちとの戦いです。主人公は、ストーリー上で出会う武将たちと、あるときは一騎打ち、あるときは手合わせとして対決します。
前作『仁王』でもさまざまな武将と戦いましたが、『仁王』ではリアリティのある武将と言いますか、『信長の野望』シリーズに登場するような、シブい武将像といった感じでした。しかし、本作ではよりキャラクター色が強くなっていて、特徴を非常に尖らせたデザインになりました。
前田利家
斎藤義龍
また、前作は侍である主人公の攻撃方法と、ほぼ同等の技をくり出してくることが多かったのですが、今回は武将たちが複数の専用の攻撃を持っています。見た目だけではなく、武将たちの個性がアクションにも反映されているのです。
たとえば東海一の弓取らしく、多彩な弓技で攻撃してくる今川義元、爆弾をぶん投げまくる松永久秀、イノシシのような妖怪となった柴田勝家の猪突猛進な攻撃などなど、個性的な武将たちとの戦いがくり広げられるのがイイ!
松永久秀
柴田勝家(半妖)
あらゆる面で正統進化 まとめますと、本作の基本的な部分は、『仁王』の持つおもしろさがそのまま体験できます。そしてそこに、妖怪といった要素の追加や、前作で磨ききれていなかった部分の進化も見られ、すべてが順当に進化した、という印象です。
戦国時代ファンもさることながら、純粋なアクションゲームファンにももちろんオススメの1本。また、本作はステータスアップや各種装備の拡充という“ハクスラ”要素も満載ですから、RPGファンにもぜひ遊んでみてほしいです。ちょっと難しいゲームではありますが、やり始めればその魅力の虜になること間違いナシですよ!