2月21日(ブルームバーグ):ゲーム機世界最大手の任天堂 の主力ゲームが中国の検索最大手、百度(バイドゥ)関連サイトに中国語版「スーパーマリオ」としてスマートフォン(スマホ)用に無料提供されている。任天堂は許可を与えておらず、調査するとしている。 同サイトは百度が保有する「91ワイヤレス」で、北京フライフィッシュ・テクノロジーという会社がスーパーマリオのアプリを提供している。韓国サムスン電子の中国語サイトでも同アプリが19日まで提供されていた。同社の日本語サイトでも任天堂のキャラクターを使った壁紙やゲームクイズなどが提供されていた。 任天堂はスマホやタブレット端末にはゲームを供給しない方針で、岩田聡社長は先月30日の経営方針説明会でハードとソフト一体型のビジネスを続ける意向を示している。同社は据え置き型ゲーム機「Wii(ウィー)U」の年末商戦での販売不振のため、今期(2014年3月期)で3期連続の営業赤字となる見通し。
任天堂広報担当の皆川恭広氏は「これらについては許可していない。当社のリーガルチームが今後、調査する」と述べた。百度の広報担当、郭怡広氏はコメントを避けた。サムスンは「知的所有権を侵害したとされるアプリサービスは停止され、アプリ業者に問題を通知した」と文書で表明した。
一方、北京フライフィッシュの共同創業者、朱金彪氏はブルームバーグ・ニュースのインタビューで、このアプリには十分なオリジナル性があり、同社が任天堂とライセンス契約などを結ぶ必要はないと述べた。アプリは無料だが、ゲーム内の広告で収入を得ているという。ダウンロード件数は「百万単位」にのぼると明らかにした。
ただ、同社のウェブページではこのゲームについて「アンドロイド版のスーパーマリオであり、オリジナルバージョンのスタイルを完全に再現」していると紹介していた。
任天堂アプリ戦略
ウェドブッシュ証券アナリストのマイケル・パクター氏は、中国では当局に法を執行する意識が薄いため「知的財産の悪用を防ぐのは難しい」と話した。また法が守られない現状を踏まえ、任天堂は「他人に知的財産を利用させるのではなく、自分たちが活用すべきだ」と述べた。
先月の経営説明会で任天堂は、スマホなどスマートデバイスの活用という点で目新しさを欠き、株価は発表途中で急落した。岩田社長は広告宣伝を主目的とするアプリを今年中に提供開始すると明らかにしたが、「マリオをスマートデバイスに供給と報道されると完全にミスリード」と従来の方針に変化がないことを強調した。
無料ダウンロードできるスマホゲームが広まる中、任天堂の「WiiU」はサムスンやアップルのモバイル端末で楽しむスマホゲームに苦戦を強いられている。加えて、据え置き型ゲーム機でライバルのソニー とマイクロソフト が昨年11月にそれぞれ新型機を発売し、好調な滑り出しを見せたことも任天堂の業績に影響した。 先月の同社発表によると、従来は550億円の黒字予想だった今期の純損益の見通しは、250億円の赤字に下方修正。岩田社長がコミットメント(公約)としていた営業利益予想1000億円も、350億円の赤字予想に引き下げた。
21日の任天堂株価は一時、前日比3.6%高となる1万2680円まで買われた。午後1時10分現在は同2%高となる1万2495円。