ルート分岐のあるストーリーや、高低差のあるマップで展開する戦略性の高いバトルなど、さまざまな見どころを持つ本作。体験版のプレイを通じてわかったポイントを紹介していこう。
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ルートを決めるのは、自分の意見……だけじゃない! まずは、ストーリーの大きな特徴について説明しよう。本作では、ゲーム中にさまざまな選択肢が登場し、いずれかを選ぶことで、“BENEFIT”、“MORAL”、“FREEDOM”という3つの価値観に基づいた、プレイヤーの“信念”が蓄積されていく。これが、ストーリーや仲間ユニットの加入に影響を与える。
ここまで聞くと、往年のタクティクスRPGファンであれば、同ジャンルの金字塔『タクティクスオウガ』を思い出すことだろう。『タクティクスオウガ』では、プレイヤーの選択によって、物語がカオスルート、ロウルート、ニュートラルルートへと分岐した。 しかし『タクティクスオウガ』とプロジェクト『トライアングルストラテジー(仮題)』には大きな違いがある。プロジェクト『トライアングルストラテジー(仮題)』では、プレイヤーはいろいろな選択を迫られはするが、最後に道筋を決めるのは、“信念の天秤”という投票システムなのだ。
体験版では、敵国に追われている王子ロランを敵方に差し出すか、もしくは守って戦うか、どちらかを選ぶことになる。それを決めるのは、主人公セレノアを含む仲間キャラクターたちによる多数決だ。プレイヤーが「ロランを守りたい!」と思っていても、投票によって “ロランを差し出す”が選ばれたならば、その決定に従うしかない。
プレイヤーの望み通りの展開に進むには、周囲を探索して情報を集め、自分とは反対の思想を持っているキャラクターを、投票前に説得する必要がある。ここに、アドベンチャー的おもしろさがある。特定の情報を得ると、説得時に新たな選択肢が表示され、それが相手を説き伏せるきっかけになったりする(逆に、ならなかったりもする)。
町民などに話しかけ、説得の材料を集めていく。なお画面左側には、仲間たちが現在どちらの意見を支持しているかが表示される。
新たな選択肢が現れたからといって、それが有効なのかはわからない。その駆け引きに、いい意味で悩まされる。
今回は体験版ということもあって、仲間の説得自体はそこまで難しくはなかったが、ゲームを進めていくと、説得が困難な場面も出てくるのだろう(今回の体験版で楽しめたのは、6話と7話の物語。おそらく、ロランに関する選択肢は、序盤の大きな山場なのではないだろうか)。
……と、ここまで淡々と解説してきたが、序盤にして“王子を引き渡すか否か”という、非常にヘビーな選択を迫られるのが、心情的にはと~ってもしんどい。ロランを引き渡せば、彼の命が危ないのは目に見えている。が、彼を守って戦うことを選べば、自領(主人公セレノアは、有力貴族の若き当主)の民が危険にさらされるのだ。どっちを選べばいいんだよ!
ロランは「民のために自分を差し出せ」と言うが、セレノアの婚約者であるフレデリカは「ロランを犠牲になんてしたくない」と言う。しかし、どちらかを選ばなければ物語は進まないのである……。
ロランを守ることを選び、仲間たちの説得もおおむね成功した場合。多数派にはなれたが、これで本当によかったのだろうか……という考えはずっと付きまとうことに……。
と、主人公の周辺だけでも、さまざまな思惑が行き交い、感情を揺さぶられるのだが、本作では、メインストーリーと並行してサブストーリーも展開。自国のほかの貴族の思惑や、他国の動向を垣間見ることができ、本作の世界における歴史が、大きく動いているのを感じられる。重厚な戦記ものが好きな人にはたまらないだろう。
サブストーリーは、マップ上で緑色の “!”で表示される。見るかどうかはプレイヤーの自由だが、やはり見たほうが物語への理解が深まる。
登場人物が多すぎて混乱しそうだが、Xボタンを押すと、発言している人物の肩書とイラストを見られるのがありがたい。子安武人さんが演じるマクスウェルは、素顔がとても気になります。
体験版のバトルは歯応えアリ。位置取りと行動順がカギ バトルシステムは、硬派なタクティクスRPGでは馴染み深い要素で構成されている。マップには高低差があり、高所から攻撃すればダメージアップ。加えて、地形や天気も戦況に影響を与える。
また、敵味方のターンをくり返す方式ではなく、素早さに応じて、敵味方が入り乱れてユニットが行動していく仕組みを採用。ユニットの配置には方向の概念が取り入れられていて、どの向きから攻撃するかによって威力が変わる。
Lスティックを押し込むと、キャラクターの行動順が数字で可視化されるので、基本的にはこれを見ながら、つぎの手を考えていくことになる。ちなみに、マップは360度回転可能で、ズームイン・アウトにも対応。
ユニットごとに習得しているアビリティは異なり、これを駆使しながら戦っていくわけだが、アビリティ使用にはTPが必要。TPは、自分のターンが来るたびに1ずつ溜まっていく。強力なアビリティほどTPを多く必要とするが、それらは戦闘の序盤には使用できないというわけだ。「いきなり高威力の魔法攻撃を放って一網打尽」という作戦は使えないので、綿密に戦略を練る必要がある。
体験版で確認できるユニットだけでも、戦士、槍騎士、戦術師、魔術師、隠密、盾士、学者、薬師、祈祷師、斥候と、バリエーション豊かなクラスと、それぞれの専用アビリティが登場する。
体験版の冒頭でも「今回の体験版は難度が高め」と説明されている通り、やみくもに突っ込むだけではなかなか勝てない。隠密アンナが使える“スリーピーダガー”(確率で睡眠を付与)や、斥候ヒューエットが習得する“影縫い矢”(確率で足止めを付与)などをうまく使い、敵を足止めしつつ、1体ずつ倒していくことになる。隠密などは打たれ弱いので、うっかり攻撃を食らってヒヤヒヤする場面も多いが、想定通りに作戦が成功したときは快感だ。
仲間ユニットで敵を挟んで攻撃すると、追撃が発生するので、うまく利用したい。
“氷壁の魔法”で障害物を作って敵を足止めし、離れたところから攻撃するのも有効。
ちなみに今回の体験版では、3マップでのバトルが楽しめる(6話で1マップ、7話でルートが分岐し、各ルートで1マップ)のだが、ロランを差し出した場合の7話マップがいちばん難しい。敵が高台に陣取っていて、しかも弓兵が多く配置されている。マップに配置されているリフトを利用すれば、高台に容易に行けるが、行ったら行ったで集中攻撃を食らう。
幸い(?)、ユニットが倒されてしまっても、つぎのマップでは復活しているのがありがたいところ。敗北条件さえ満たさなければ、主人公セレノアが倒されたとしても、戦いは続けられる。筆者は犠牲を出しつつも、なんとか勝利できた。ユニットを誰も犠牲にすることなくクリアーしたいやり込み派のプレイヤーは、ぜひ戦略を練って挑戦してみてほしい。
ちなみに、7話のマップでリフトをうまく利用するには、戦闘前のRPGパートで、リフトを修理しておく必要がある。こうした仕掛けにより、「隅から隅まで探索しなきゃ!」という気持ちに、自然とさせられる。
ゲームに夢中だったあのころの気持ちを、もう一度、最新の技術で あくまで筆者の意見だが、スクウェア・エニックス 浅野チームの開発理念のひとつには、“あのころのゲームのプレイ感覚を、最新技術で表現する”というものがあるのだろうと思っている。
30代前後のゲーマーにとって、スーパーファミコン~プレイステーション時代に遊んだゲームの思い出は、いわゆる“思い出補正”もあり、キラキラしたものとして胸に残っている。が、いま、それらをそのまま遊ぶと、「あれ、こんなものだったっけ……?」と物足りなさを感じたりもする。
だから、懐かしさを感じるゲームデザインにしつつも、最新の技術と新しい要素を加えて、いま遊んで楽しいゲームを作ろう。そんな理念のもと、プロジェクト『トライアングルストラテジー(仮題)』は作られているのではないだろうか。
これまで、RPGというジャンルにおいて『ブレイブリー』シリーズや『オクトパストラベラー』を生み出してきた浅野チームが、タクティクスRPGというジャンルで、どんな結実を見せてくれるのか。発売は2022年予定と、だいぶ先ではあるが、続報を楽しみにしたい。