本作は、禁酒法が施行された1920年代のアメリカ・シカゴが舞台の作品。実在した人物を含む“14人のボス”からひとりを選び、暗黒街の頂点を目指していく。密造酒の販売から構成員を雇っての抗争など、リアルなギャング体験を味わえるのが魅力だ。
この記事では、そんな『エンパイア・オブ・シン』をストラテジーゲーム初心者の目線でレビューしていく。なお、プレイしたのはPS4版となっているが、じっくり遊べるゲームのため、Nintendo Switchの携帯モードで遊ぶのにも向いているだろう。
ボスたちの“圧”がどれもすさまじい!! ゲームを開始すると、まずは主人公となるギャングボスを選択することになる。全部で14人いるボスの中には、アル・カポネといった実在の人物もおり、ギャング作品が好きな人にとってはたまらないだろう。
ボスたちはビジュアルやボイスだけでも個性が強く、暗黒街の覇権を争っている連中だけあって、どのキャラクターも見ていてすさまじい圧力を感じさせる。加えて、ボスごとに固有のアビリティやゲームを有利にするボーナスなどがあり、どのキャラクターにするか小一時間悩んだほどだ。
ロス・ルセロスというグループをまとめ上げる老婦人ギャング、エルヴィラ・デュアーテ。
ちなみに、筆者は悩んだあげく、「強そうな婆さんキャラが好き」という理由でエルヴィラ・デュアーテを選択。初プレイ時はあまり性能面を考慮せず、第一印象優先で決めてしまったほうがいいかもしれない。
もちろん、選んだボスごとに専用のストーリーが展開。会話シーンではいかにも洋画チックな、皮肉めいた言い回しや挑発的なセリフなどが登場するので、このあたりはぜひ注目してほしい。
遮蔽物に隠れることが重要なシミュレーションバトル ボスを選択するとチュートリアルが始まり、本作において勢力を拡大するために重要なシミュレーションバトルを学ぶことに。なお、『エンパイア・オブ・シン』は覚えることが膨大にあるため、チュートリアルはスキップせずにしっかり見ておくことをオススメする。
本作のバトルはターン制のシミュレーション形式で進行し、マス目状に区切られたエリアを移動しながら戦っていく。敵に肉薄して近接攻撃を仕掛けることもできるが、基本的には銃器による遠距離攻撃が使いやすい印象だ。
戦ううえでカギとなるのが、遮蔽物を利用したカバー行動。壁や設置物に隠れるような位置取りをすることで、敵からのダメージを大幅に減らすことができる。逆に敵に効率よくダメージを与えたい場合は、射線上に遮蔽物が存在しないよう、回り込むような動きが必要になる。
遮蔽物となる地形のそばに移動すればキャラクターは自動でカバー行動をとるが、その際のモーションがとても滑らかで、リアルな銃撃戦の演出にひと役買っている。戦う場所によって地形もさまざまなので、つねにカバーを意識した位置取りが勝利の秘けつとなるだろう。
移動した先でカバー行動をとれる場合は、盾のマークが表示される。
攻撃手段は銃撃や近接技がメインだが、ボスならさらに専用のアビリティが使用可能。筆者が選んだエルヴィラは、“悪魔の吐息”という敵を一時的に支配するアビリティを使えるのだが、これがとても便利で強い! 支配下に置いた敵は味方ユニットとして操作できるので、お手軽に敵の数を減らしつつこちらの戦力を増やせるのだ。
ボスアビリティは一度使用するとクールタイムが発生するが、それを差し引いても“悪魔の吐息”は強力だった。ほかのボスのアビリティを試していないので断言はできないが、もしかしてエルヴィラはかなりの強者だったのかも……?
毒々しい紫色の煙雲を吹きかけ、敵をコントロールする“悪魔の吐息”。
手ごわいバトルを勝ち抜くには、キャラクターの装備品も重要となる。本作ではブラックマーケットで銃器や防具などを購入でき、キャラクターごとに幅広いカスタマイズを行うことが可能だ。
施設を自分のものにして勢力を拡大していく ひと通りのチュートリアルが終わると、シカゴの街を自由に歩き回れるようになり、何をするのもプレイヤーの自由になる。とはいえ、初プレイ時は何をどうすればいいのかわからないと思うので、まずはミッションを進めていくといい。
現在発生中のミッションを進めていけば、おのずとゲームの感覚をつかめる。
大まかなゲームの目的はボスの悪名を高めてシカゴの街を支配していくことだが、その過程で大切なのが各地の施設を自分のものにすること。施設の私有化は、空きビルを金で買い取るか、すでに居座る人間をバトルで駆逐して乗っ取るかがおもな方法となる。じつにギャングらしい。
私有化した施設では、密造酒の製造やカジノの経営などさまざまな事業を行うことができ、これらを通じて己の勢力を拡大していくことになる。筆者はストラテジーゲームに慣れているわけではないので、このあたりのやりくりに最初は苦労したが、少しずつ自分の縄張りが増えていく様子を眺めるのはいままでにない快感だった。
自分のものになった施設は、ワールドマップで赤色に表示される。画面が赤色ばかりになったときは、思わずニヤリ。
ひとつ注意したいのが、街中を歩き回っているあいだはリアルタイムで時間が進んでいく点。時間が進行すれば店の経営状況も敵の勢力図もどんどん変化し、お金の出入りも慌ただしく動いていく。雇っている構成員への給料も、日数が経てばもちろん支払わなければならない。
暗黒街のトップに君臨するためには、もたもたしている時間などないので、つねに情勢を把握しながら動かなければならない。メニュー画面を開いているあいだは時間が止まるので、ここでつぎの戦略をじっくり考えてから行動するのがオススメだ。
何をするにもやはり金! 密造酒で稼ぎまくれ!! 本作で効率よく勢力図を増やすには、やはり金がものをいう。バトルで敵の施設を強引に奪うこともできるが、バトルで勝つには構成員を雇ったり装備をそろえるのがカギになり、どちらも結局は金が絡んでくる。
金を稼ぐ方法はいろいろあるが、特筆すべきは“密造酒”の製造・販売だ。禁酒法が敷かれた世界が舞台となる本作において、密造酒はゲームの大きなテーマにもなっている。
密造酒で金を稼ぐには、酒の醸造所と販売所のふたつの施設がキモとなる。せっかく販売所となる酒場があっても、醸造所が少ないと供給が追いつかず、利益はなかなか増えない。逆もまたしかりなので、醸造所と酒場はバランスよく建てる必要がある。
これらの施設は建てるだけで終わらず、アップグレードで酒の生産量や品質を上げることも可能。製造する酒の種類も選ぶことができ、客の望みのものを提供することが売り上げを伸ばすコツだ。密造酒ひとつをとっても、経営シミュレーションのような本格的な作りなっているのが魅力だ。
ただ、密造酒はあくまでひとつの手段であり、ほかにも金稼ぎの方法はある。下宿やカジノ、ホテルなどの施設を建てることもできるので、バランスよく経営することも大事だろう。
本作において金は明確な“力”であり、金欠=ゲームオーバーといっても大げさではない。ゲーム中は、常に金の流れを頭に入れてキャラクターを動かしていきたい。
14人のボスで遊ぶだけでもボリュームたっぷり! “勢力を拡大して暗黒街のトップに立つ”とだけ書くと本作があっさりしているように聞こえるが、その過程には山ほどやれることが用意されている。覚えることが多く、効率を求めると忙しく動き回る必要もあるが、ギャングのボスとして街を徐々に支配していくのはじつに達成感があった。
1のボスをやり込むだけでも十分遊べるので、14人のボスすべてのストーリーを追ったらそれだけでもお腹いっぱいになるのは間違いなし。腰を据えてストラテジーゲームを遊びたいファンや、アウトローなギャングたちの生き様を体験したい人は、ぜひ本作を手に取ってみてほしい。
敵勢力との“交渉”も見どころのひとつ。平和的に進めるも、戦争を仕掛けるも自由だ!